通信制高校に進学したら人生終わり?イメージと実際の状況を解説 2023.07.26
通信制高校が全日制や定時制よりも比較的入試や通学などのハードルが低いことから、通信制高校に通うこと自体が「人生終わり」と感じる人も少なくありません。
実際、「通信制高校に行きたい」と言った際、「やめといたほうがいい」と友人や家族に言われてしまった経験を持つ人も中にはいます。
しかし通信制高校に通うことで人生が終わるわけでは決してありません。
そこで今回は、なぜ通信制高校がマイナスイメージを持たれてしまうのかや人生終了しないために生徒が心がけるべきポイントなどについて解説していきます。
通信制高校にネガティブなイメージがついている理由
通信制高校は様々なサポートが受けられるといったメリットがありますが、やはり全日制高校に通う人が多いことから「人生が終わるのではないか」といった不安を持たれています。
そもそもなぜ通信制高校に対してマイナスイメージがあるのかについては、おもに以下のものが考えられます。
- 全日制高校と比較してしまう
- 卒業後の進学や就職に不利と思われやすい
- 高卒資格が取れないと思われがち
全日制高校と比較してしまう
中学校を卒業したらそのまま全日制の高校に進む人が圧倒的に多いため、どうしても通信制高校だと比較してしまいます。
もちろん人それぞれの都合が合って通信制高校に通っているわけですが、世間体を気にしてしまったり、「集団になじめない自分はダメだ」と感じる人も少なくありません。
以上のようなことから、通信制高校に行くことが普通ではないと感じてしまい、人生終わりと思ってしまうのです。
しかし通信制高校に通っていたとしても、高校卒業資格を取得できれば進学や就職の選択肢は広がります。
全日制と同じような進路を歩めるので、決して通信制高校は悪いことではないのです。
卒業後の進学や就職に不利と思われやすい
通信制高校には、「なんとなく進学や就職できないのでは?」と考えている人も少なくありません。
しかし実際、通信制高校では進学率も就職率も全日制とそこまで変わりません。
とくに就職率のみで考えると、全日制を上回っているといったデータもあると言われています。
企業は高卒からの就職の場合、普通科か専門的な分野について学んでいるかで判断することはあっても、通信制高校で差別されることはありません。
ちなみに履歴書には「通信制過程普通科」と記載するようにしましょう。
高卒資格が取れないと思われがち
通信制高校には高卒資格が取れないと思っている人もいます。
しかし通信制高校だからといって高卒資格が取れないのは間違いです。
通信制高校は教育機関として正式に国から認められており、「3年以上の在籍」「74単位以上の取得」「30時間以上の特別活動への参加」の3つの条件を満たせば高卒資格を取れます。
通信制高校の状況とは?
ここでは、通信制高校の状況について解説していきます。
生徒数
現在おおよそ330万人が中学卒業後に高校に進学しており、うち約20万人程度が通信制高校への進学を決めています。
つまり割合としては、1クラス50人程度のクラスであれば数人が通信制高校進学をしているといったことがわかります。
また通信制高校には公立と私立とがありますが、私立の通信制の生徒が増加する一方で、公立への進学者は減っていっています。
理由は様々考えられますが、私立の方がサポート体制が整っていることや、全日制では学べない専門的な分野について学べるからといったものが考えられます。
学校数
全ての学校数のうち約90%近くが全日制の高校で、通信制高校は約5~6%だといわれています。
また学校の増加推移で見ると、全日制や定時制は減少傾向にありますが、通信制高校は徐々に増えていっています。
進路状況
通信制高校に通うにあたって進路実績は気になるものです。
通信制高校では学校にもよりますが、大学もしくは専門学校への進学が40%程度、就職が20%程度だといわれています。
また残りの40%は進学や就職をせず、芸能やスポーツなどに打ち込む人が一部含まれています。
大学進学コースが用意されている通信制高校だとより進学率が高いので、自分が将来したいことに合った学校を選ぶようにしましょう。
通信制高校に通うメリット4つ
ここでは、通信制高校に行くメリットについていくつかご紹介します。
- 全日制よりも自由度が高い
- メンタル面のサポートがある
- 進学実績豊富な学校もある
- 専門的な分野について学べる
全日制よりも自由度が高い
通信制高校は週に1日など自分で登校頻度を決められたり、登校時間も遅めに始められるなど、全日制にはない自由度の高さが魅力です。
基本的に自宅学習なので、つねに自分のペースで進められます。
とくに不登校生や精神的・身体的な問題によってなかなか登校できない人にとっては安心です。
また校則に関しても通信制高校は全日制よりも自由で、私服登校OKの学校がほとんど。
授業時間も全日制よりも短いところもあるため、スキマ時間にやりたいことやアルバイトなどに割けられます。
メンタル面のサポートがある
通信制高校は不登校出身の方の利用が多いことから、メンタル面のサポートが全日制よりも充実しているといった面があります。
ほかにも学校によっては不登校生だけではなく、発達障害や学習障害を持った生徒に対するサポートをおこなっている学校もあります。
たとえば、マンツーマンでの学習サポートや臨床心理士の資格を持った教師やスクールカウンセラーが多数在籍しているなど。
実際、先生との距離も近く、全日制から通信制高校に転入した人の中には、「前の高校よりも話しやすかった」といった声が上がるほどです。
発達障害や学習障害によって過去に孤立やいじめを経験したのであれば、メンタル面のサポートが充実しているかが重要です。
また生徒だけではなく保護者の方も相談できる通信制高校であれば、家での学習の進め方や進路相談、対応方法などを相談できるので保護者の方にとってもおすすめ。
ほかにも、いじめや不登校など日常生活で問題を抱える方を支援するソーシャルワーカーを置いている学校もあるため、通信制高校を探す際はより手厚いサポートを用意しているところを探してみて下さい。
進学実績が豊富な学校もある
通信制高校と聞くと、「進学実績が少ないのでは」「大学に進学できないのでは」と心配される方も少なくありません。
しかし通信制高校のなかには、「大学進学コース」といったカリキュラムやコースを用意しているところもあります。
実際通信制高校のサイトを見れば、国公立や難関私立大学といった進路実績をもつところもあるため、もし進学の意志があるのならチェックしておくことをおすすめします。
また、学習塾との連携をしている通信制高校であれば、より進学や学習に力を入れていると判断できるのでおすすめです。
専門的な分野について学べる
とくに私立の通信制高校には、全日制高校では学べないような専門的な分野について学べるコースやカリキュラムが用意されている学校がたくさんあります。
たとえば、美容や調理、プログラミング、トリマー、ファッション、音楽、演技など学校によってさまざま。
なかには、資格取得をサポートしてくれるような学校もあるので、就職にも有利になるといったメリットもあります。
「特に何もしたいと思うことがない」「将来やりたいことが見つからない」といった方こそ、広い分野を学ぶ機会のある通信制高校はおすすめなのです。
通信制高校に通うデメリット2つ
通信制高校にはメリットもありますが、人によってはデメリットと感じるところもあります。
そこでここでは、通信制高校のデメリットについてご紹介します。
- 学習へのモチベーションが上がりにくい
- 人とのコミュニケーションを取る機会が減る
学習へのモチベーションが上がりにくい
通信制高校は基本的に自宅学習であることも多く、どうしても学習へのモチベーション維持が難しいといったデメリットがあります。
一方、全日制だと同じように勉強している友達がいますし、時間割や休憩時間などが定められているので強制的ではありますが学習に集中できます。
通信制高校だと孤独に勉強することになるため、人によってはそのまま何年も通学したり、登校しなくなったといったケースも実は少なくありません。
もし学習へのモチベーション維持が不安な方は、週に何度か登校するスタイルにするか、サポート校との併用も検討してみるのがいいでしょう。
人とのコミュニケーションを取る機会が減る
全日制や定時制の場合だとほかのクラスメイトや先生とのコミュニケーションがありますが、通信制高校だとどうしても人とのコミュニケーションが取れず触れ合えないリスクがあります。
週に5日通学するコースを選んでいるのなら問題ないですが、年に数える程度しか登校しないとなれば、どんどん人と関わることが難しくなっていきます。
通信制高校によっては徐々に登校日を増やせる学校もありますし、ソーシャルスキルについて学べる授業やコースが用意されているところもあります。
コミュニケーションスキルは今後の就職や進学においても必須の能力なので、もし不安な方はイベントや部活動などをチェックしておくといいでしょう。
通信制高校で人生終了しないためにすべきこと3つ
通信制高校は全日制や定時制とは違って自由度があるのが強みですが、人によっては自由すぎて自立できないといった面に注意しなければいけません。
そこでここでは、通信制高校に通う方がスクールライフで気を付けるべきことについてご紹介します。
- 自己管理を怠らない
- やりたいことや目標を見つける
- 確実に卒業する
自己管理を怠らない
全日制や定時制では学校側が全て単位を管理し、順当に受けて試験にパスすれば卒業できます。
しかし通信制高校では主に自宅学習がメインとなっていますし、レポート提出やテスト勉強なども自分でやらなければいけません。
したがって、自己管理がなっていないとなかなか単位を取得するのは難しいでしょう。
もし自分で学習のスケジュール管理するのが不安な方や、何から勉強すればいいかわからないといった方は、こまめに先生やカウンセラーに相談してみるのがおすすめです。
また自己管理については学生時代のうちだけではなく、社会人になってからでも重要な能力です。
しっかり高校生活のうちに学んでおくようにしましょう。
やりたいことや目標を見つける
自己管理を怠らないためにも、はじめのうちから「高校卒業後に何がしたいか」「将来どんな仕事をしたいのか」について目標を見つけるといいでしょう。
とくに自由度の高い通信制高校でなんのモチベーションや目標を持たずにただ授業をこなすだけだとかなりもったいないです。
したがって、入学時に目標がなかったりやりたいことが見つからないといった方は、とりあえず3年間を使って何かしらの目標を定めてみてください。
コースやカリキュラム選びの基準にもなりますし、何かしらの目標や目的意識を持った方が、日々の学習のモチベーションにもつながります。
確実に卒業する
通信制高校に現在通っているもしくは通おうとしているのであれば、「確実に卒業する」といった強い意志を持つことが何よりも大事です。
なぜならせっかく通信制高校に通っていても、最終的に継続できずに辞めてしまうと、世間的に見ると中卒となってしまいますし、経済的な面でももったいないです。
中卒だと、どうしても今後の大学への進学や就職でも圧倒的に不利になるので注意しなければいけません。
先にも述べたように通信制高校では、「3年以上の在籍」「74単位以上の取得」「30時間以上の特別活動への参加」の3つの条件を満たせば高卒資格を取れるようになっています。
たとえ大学や専門学校に行きたいという気持ちが今はなかったとしても、今後行きたいと考えるようになるかもしれません。
しかし、通信制高校も辞めて中卒になってしまうと大学も専門学校も受験することすらできないのです。
就職するにしても進学するにしても、高校卒業資格を取得しておけば将来の可能性を広げることに繋がるので、とにかく卒業だけはしておくようにしましょう。
通信制高校に通う目的があれば人生終わりじゃない!
今回は、なぜ通信制高校がマイナスイメージを持たれてしまうのかや人生が終了しないために生徒が心がけるべきポイントなどについて解説してきました。
通信制高校は全日制よりも進学者が少なく、就職率や進学率に不安を持つ方から見ると、「人生終わりなのでは?」と思う方も少なくありません。
しかし実際、通信制高校に入学したからといって人生が終わるわけではありません。
むしろ通信制高校は自分の学習ペースで進められたり、全日制では学べない専門的な分野について学べるメリットがあり、あらゆる可能性を秘めています。
さらに進学率や就職率についても全日制に引けを取らない実績を持つ学校や、大学進学に力を入れている学校もたくさんあります。
しかし一方で、通信制高校は全日制よりも、「人とのコミュニケーションが取りづらい」「自立学習やモチベーションをキープするのが難しい」面もあるのも事実。
「通信制高校に通ったけどこれからどうすればいいかわからない」とならないためにも、やりたいことや目標を定めて取り組むようにしてください。