保険会社の営業職は、転職サイトなどでもたくさん求人が出ている職種の一つです。未経験者歓迎、という求人も多く見かけますが、本当に未経験からでも転職できるのか、どんな求人を選べばよいのか、不安ですよね。
保険会社と一言で言っても、生保・損保と種類も違いますし、国内生保と外資とでも異なります。保険業界の給与や仕事内容など、実態はどうなのでしょうか?
こちらでは、保険会社に未経験で転職する方法や必要なスキル、資格などについてまとめてみました。また、求人の選び方や避けた方が良い求人の特徴なども挙げていますので、ぜひ参考にしてみてください。
損害保険会社の保険営業の仕事内容
日々の暮らしの中で突発的に起こるトラブルから顧客を守る
交通事故・火災地震・風水害・盗難等を対象とし、事故や災害、盗難などが起きた時に損害を補償してくれるのが損害保険会社の役割です。突発的に起こる日々のトラブルから生活を守ってくれる、安心して生活するためになくてはならない存在です。
営業部門には、企業や団体を対象とした法人営業と個人営業があります。新規顧客や既存顧客への商品の提案や代理店へのサポートが主な仕事になります。
業務部門では、保険請求の手続きや審査、事故相手との交渉サポート、保険金支払いの手続きなど事務的な仕事が主になります。ただし、代理店では事務作業中心ですが、営業店になると顧客との電話対応や代理店から上がってくる書類の事務処理なども加わるため、業務量は多くなります。
金融業界なので総じて年収レンジは高い
損保業界は、一般的には年収レンジが高い業界です。
特に、「東京海上ホールディングス」「MS&ADホールディングス」「損保ジャパン日本興亜ホールディングス」の3メガと呼ばれる損保は、40代で年収1000万以上と言われています。さらに上を行くのが外資系で、管理職クラスになると年収2000万以上とも言われます。
企業によって給与の差が大きいのが現実で、中小損保との格差もあります。
コミュニケーション能力や心身のタフさが必要
特に営業職は、数字を上げるためはもちろん、損害賠償の相手との交渉事も多いのでコミュニケーション能力の高さが求められます。また、顧客に商品を提案するためのプレゼンテーション能力も必須です。事故が起こると顧客に呼ばれたり、現場に駆けつけたり、新規顧客を獲得するために飛び込み営業をしたり、ハードな側面もたくさんあるため、肉体的&精神的タフさも求められます。
入社時に専門的な資格は不要だが、運転免許は必須
事故や災害に対する損害賠償という大きな責任を伴う仕事なので、幅広く正しい専門知識が必要です。未経験者OK、という求人もありますが、入社してからは資格取得や勉強しなければならないことが盛り沢山です。ただし、営業職として勤務するなら運転免許は必須です。
まず、国内で損保の仕事をするためには、「損保一般試験」の合格が必須です。これは、入社後に研修を受けながら勉強し、取得するのが一般的です。
ただ、その後も商品やコンプライアンス、事故受付関連など、業務ごとの資格取得や勉強が欠かせません。商品もどんどん新しいものが出てくるので、そのたびに社内研修や勉強会などが開催されるなど、日々勉強が求められる業界です。
国内の市場は縮小傾向にあるため、将来性は不透明
現在は、先出した3メガと呼ばれる損保会社が保険業界の売り上げの9割を占めているという3メガ時代全盛です。中小の保険会社は生き残るために必死ですし、待遇も3メガの比にはなりません。
また、少子高齢化や共働きの増加、若者の車離れの影響で新規加入者は減っており、国内の市場は縮小傾向にあります。
海外保険事業が狙い目
それでも、損害保険会社の平均年収は約903万で、全体平均の約2倍となっています。
日本やアメリカなど保険そのものが飽和状態になっている国では、成長が鈍化していますが、東南アジアなどまだまだ市場が拡大途中という国もたくさんあります。これからは、市場拡大が見込める海外保健事業が狙い目です。
ただし、損保業界は世界情勢や景気の影響を受けやすいため、いつ大打撃を受けるか分からないというリスクもあります。
キャリアパスは多岐にわたる
最初は必ず現場を任されるのが業界の常です。
現場を経て、コンサルティング業務、そして商品開発・営業推進といった内部の方へ入っていく、というキャリアパスが王道です。現場で経験を積んで管理職から、人材育成スタッフ・研修講師などとして、運営に携わる形もあります。損保業界のキャリアパスは多岐にわたり、目標を持ち、キャリアプランを明確にしていくことが重要になります。
生命保険会社の保険営業の仕事内容
生命保険制度の運営体制を整えること
生命保険会社の対象は「人」です。
人の身に死亡・病気・ケガなど万が一のことがあったときに損失を保障してくれるので、多くの人が契約している保険です。こちらも、個人と法人それぞれの商品があります。
生命保険会社では、生命保険制度の運営体制を整えることが第一命題といえます。生命保険は、相互扶助の精神で成り立っているものです。独自の生命保険制度を運営し、保険金や給付金などが受取人に対してきちんと支払われる体制を整えることが、最も大切な役割といえます。
契約者のフォローや支払業務、マネープランの提案など
相互扶助を成立させるためには相当数の契約者が必要不可欠です。そのため、契約者を増やすべく営業活動や契約者へのアフターフォローも大切な仕事です。そして、保険への加入可否判断や保険料収納、保険金支払といった業務も行います。
生命保険は、資産運用としての側面も持ち合わせているため、長期的なマネープランの提案も必要になります。このように、生保は幅広い業務を担っています。
年収レンジの高い業界、大手なら30代で1000万円超も
生保は、成績次第では、30代で年収1000万に達する人もいるという年収レンジの高い業界です。金融業界でも高水準で、ある調査では30歳の推定年収が約650万円という結果も出ています。ただし、大手の生保は高待遇が見込めますが、大手でも総合職以外は特出していませんし、中小保険会社もそこまで高くはありません。
ただ、営業は外回りが多く、数字さえ上げれば自由が効くので、子育て中や家事との両立をしたい、という女性も多く活躍しています。ギネスに載ったおばちゃん営業は年収約2憶というから驚きです。大手になればなるほど福利厚生がしっかりしていることも魅力の一つです。
コミュニケーション能力やタフな精神力が求められる
営業職には欠かせないコミュニケーション能力はもちろん、顧客への提案を受け入れてもらうためにはプレゼンテーション能力も欠かせません。また、暑い中、寒い中、断られ続けてもめげずに外回りをし、営業をする肉体的&精神的タフさも重要です。努力で培う部分もありますが、持ち合わせた才能という側面もあるので、向き・不向きもある仕事です。
自動車免許があれば、未経験でも入社することは可能
転職の場合は、生保の経験があれば優遇されますが、入社するにあたり必須の資格はないので、未経験者OKという求人も多いのが特徴です。ただし、営業にも必要なので、自動車運転免許だけは取得しておくことをおすすめします。
入社してからは生命保険募集人として働くための一般過程試験に合格する必要があります。また、扱う商品が多様なので、変額保険やFPといった資格も、入社後に研修や実務を続けながら取得するケースが多いです。
あらたな市場を開拓することが求められている
異業種からの参入が進んで競争が激化していたり、大手がこぞって介護事業に進出しているという現実があります。
将来的には、規制緩和が進んで業界再編が起こることが想定されます。ただし、健康増進を売りにした健康関連事業への進出、少子高齢化による介護保険や公的年金の不安などによる個人年金市場のニーズは高まっているので、あらたな市場を開拓できれば、明るい見通しもあります。
生保業界は景気に左右されにくいので安定感はありますが、保険契約が飽和状態になっている国内市場は縮小傾向にあるので、国内での将来性には疑問符がつきます。大手と違い、海外展開できない中小生保会社は生き残れるか怪しいところです。生保への転職を目指すなら、やはり大手がおすすめです。
長期的なキャリアプランを見通せる
代理店開拓やトレーナー、資産運用、最終的には独立といったキャリアパスが明確なので、長期的なキャリアプランを立てやすいのも魅力の一つです。
未経験でもOK!自尊心を保てる優良会社の探し方
まず、保険会社種類による特徴を調べる
損保の場合、通販型の商品を主力とする保険会社は保険料が安い分、人件費を抑えています。
生命保険業界の営業職は未経験を積極採用するという特徴があります。保険外交員になるためには試験を受ける必要があり、一か月ほどの研修期間があるので、とりあえずは未経験でもOKなのです。営業はノルマありきで、特に生保レディは、家族と友達と自尊心をなくすとも言われており、それ相応の覚悟が必要です。
会社の求人条件を要チェック
こんな求人は完全無視すべき
「やる気次第で年収アップ」と記載されている求人がありますが、これは間違いです。「やる気=数字」という解釈なので、やる気だけで年収はアップしません。
また、常に募集が出ている企業の求人も要注意です。入社しても社員が定着しない、離職率が高くて回転している、という裏付けでもあります。
毎日ノルマが達成されるまで帰れないなど、ブラック企業に入ると痛い目に合うのは目に見えています。無理やりな勧誘ばかりしていると、仕事中車で突っ込まれる、なんてことも無きにしもあらずです。
見逃がさないで!優良会社の条件
社員教育を大切にしている企業には、優良企業が多い傾向があります。これは、未経験からの応募が多い証拠でもあります。社内研修制度が充実しているかどうかは、求人票に書かれている内容を確認したり、面接で聞いたりするなどして、あらかじめ把握しておくのが安心です。
また、コンプライアンス遵守は、現代の企業活動において欠かせない重要なファクターです。
コンプライアンスに関する取り組みがしっかりしている企業は安心感があります。業務停止命令が出る危険が低いため、顧客との信頼関係が保てるのはもちろん、自分の仕事に支障が出る可能性がないのもメリットです。
保険会社への転職に失敗した実例
クレーム対応や営業経験もあり、業種は違ってもやることは一緒だろうと思い損保に転職したが、加害者・被害者といった人間関係の汚い部分を見たり、悲惨な事故処理をしたり、精神的にタフで身が持たない、という失敗例もあります。
業界や企業について事前にしっかり研究しておくことが、入社後のミスマッチを防ぐことにつながります。
仕事復帰を考える主婦の人が再就職先に選びやすい職業の1つに、生命保険会社の営業いわゆる「生保レディ」が挙げられ …
求人選びに失敗しないために、会社の内情を調べる方法
会社の中の人に聞く
今、その企業で働いている人に話を聞くのが、一番手っ取り早く、正確な情報を得られる方法です。その企業で働いている人がいれば、その人にヒアリングしてみてください。社員や元社員の口コミサイトもあるので、それを参考にするのも一つの方法です。
転職エージェントを使うのもアリ
企業の内情に詳しいコンサルタントが在籍している転職エージェントを利用して情報収集するのも一つの方法です。転職エージェントには、一般では見ることのできない非公開求人があるため、自分に合った求人を探してくれるほか、あらかじめブラック企業も排除してくれるので、転職活動を初めてする、という人にもおすすめです。
リクルートエージェント
人材紹介業で国内最大手のリクルートが運営する転職エージェントです。登録者、求人数、転職成功実績ともに圧倒的なスケールで、業界を牽引しています。
訪問でも電話でも面談OK、土日にも対応してくれるので助かります。面接対策セミナーや応募書類添削など、サポート体制も充実しているのではじめての転職活動でも安心です。
未経験者OKや営業職の求人も豊富に扱っているので、まずは登録しておきたいエージェントです。
保険業界の転職におすすめの転職エージェント・転職サイト30社を比較してランキング形式で紹介しています。保険業界で年収アップ転職したい人、保険業界から異業種転職したい人、未経験で保険業界に転職したい人それぞれおすすめの転職エージェントを紹介します。
まとめ
生保・損保とも年収レンジが高くやりがいもあり、転職するには魅力的な業界ですが、将来性の厳しさや仕事のハードさは当然ながらあります。保険業界でより良い転職をするには、企業選び・求人選びが重要です。
良い求人を選ぶために大切なのは、
・社員教育を大切にしている企業を選ぶ
・会社の中の人に聞くなどして企業研究をしっかりしておく
・非公開案件紹介やブラック求人排除に役立つ、転職エージェントを利用する
といったことがポイントになります。
「未経験者歓迎」という求人も多い保険業界は、求人選びを間違うと、取り返しのつかないことになりかねません。慎重に求人選びをして、転職を成功させてください。