有休消化率の高い仕事ランキング
有休取得の義務化や、年次有給休暇取得促進期間の実施など、政府により労働者の有休消化率を上げる取り組みが行われています。50%と世界で断トツの最下位だった日本の有休消化率も、徐々に上がってきてはいますが、それでも安定の最下位は変わりません。
有休消化率を調査した12ヶ国の平均値は80%です。日本の次に有休消化率が低いオーストラリアでも70%を維持しています。このことから、日本がいかに休まない国であるかが分かります。
しかしその日本にも、世界に負けないくらい有休消化率の高い仕事があります。就職、転職を考えている方にはおすすめの仕事です。どのような業種が、有休消化率のランキングで上位に来るのでしょうか。
自動車製造業
まず、ほとんどの調査機関が発表する有休消化率ランキングの中でトップを独占しているのが、自動車製造業です。中でもホンダ、ダイハツ、トヨタなどの大手企業は常にランキング上位に位置しています。やはり人手が足りていて、人の動きをしっかり管理している大きな会社は、従業員が休むことに抵抗が少ないようです。
逆に、そのように従業員の休養や健康状態にしっかり気を遣ってきたから大手でいられる、という考え方もできます。
特にホンダは「働き方改革」が叫ばれるはるか昔の1970年代から「有給休暇カットゼロ運動」という取り組みを行っており、従業員が有休消化をしやすい環境を創り上げています。
有給休暇が義務化されたのが2019年なので、いかにホンダグループに先見の明があったかが分かります。
製造業
自動車に限らず、他ジャンルの製造業も有休消化率ランキングの上位にいます。企業名を上げると、化学製品メーカーのダイキン工業や建設・鉱山機械の製造・販売を行うコマツ、農機メーカーとして有名なクボタなどです。
製造業といえば中小企業の人手不足が深刻化していますが、AIをはじめとしたIT技術を取り入れ事業を拡大する大手企業は、将来性と安定性を若い世代にアピールすることができ、人手には困っていないのです。
中でもクボタは、97%という高い有給休暇率を記録していますが、他にも育児休暇やファミリーサポート休暇、短時間労働制度なども取り入れており、従業員のライフワークバランスに関しては1歩進んでいる印象です。
電力会社
製造業に次いで多くランクインしていたのが電力会社です。電力会社の最大の強みである、安定性のためでしょう。日本に電気を一切使わずに生活を送れる人は少ないですし、医療の現場を維持するにも電気は供給し続けなければなりません、そのため電力会社が必要とされなくなり倒産する、ということはよっぽどのことが起きない限りありえないのです。
また、関東大震災を境に、電力会社の統合が進められたため、電力会社には競合が極端に少ないのです。その安定性がブランドとなり、人手も集まり、従業員をしっかり休ませるだけの余裕がある、というわけです。
関西電力は「有給休暇取得率90%以上」を目標にしており、その目標を達成し続けています。また勤務時間を自分で決めることができる「フレックス制度」も導入しており、現代に合った働き方を勧めている会社と言えます。
IT通信/情報・通信業
IT通信、情報通信業も有休消化率の高い企業が目立ちました。インターネットや電話などに関する事業を展開する情報通信業は、組織が大規模であることが多いので、個人の意思で現場のルールを決めることが少ないのです。一見、風通しが悪くなるように思えますが、このトップダウンスタイルが逆に、労働法をみんなで守らなければ、という法令尊守につながっています。
また、情報を扱う業種なだけあって、社会の新しい流れには敏感でなければいけません。そのため、「身を粉にして会社に人生をささげる」と言ったような古い価値観はすでにアップデートされている企業が多いのです。それに加えIT業界は、フリーランスや転職によるキャリアアップに前向きな風潮があるので、ダイバーシティに富んだ仕事スタイルを支える制度を備えた会社が多い傾向にあります。
情報・通信業の例を挙げると、NTT東日本の2020年度の有休取得率は85%と世界レベルです。その他にもNTT東日本は育児休職、介護休職、在宅勤務などをはじめとした従業員の生活に合わせた働き方を提供する制度を多く設けています。
消費者金融業
消費者金融業界も、有休消化率が高いことで知られています。業界全体の有休消化率は76%と日本の平均を大きく上回っています。他の業種は、制度が整っている大手企業が、業界全体の有休消化率を引き上げている印象が少なからずあります。しかし消費者金融業は、業界全体の有休消化率が高いのです。
これは日本貸金業協会が関係しています。日本貸金業協会とは、貸金業界の規制を行う機関です。この機関が協会に加入している消費者金融企業に労働基準法を守るように声掛けを行っているのです。
アコム株式会社は75%、アイフルグループは76%、「レイクALSA」で知られる新生フィナンシャル株式会社は65%、「プロミス」の運営会社SMBCコンシューマーファイナンス株式会社は70%と、有名どころの消費者金融会社は日本の平均有休消化率を超えています。
有休消化率の低い仕事
逆に、有休消化率をもっと上げる取り組みが必要な業種も複数あります。どの業種も人手が足りないことが主な原因です。
飲食業界
フードサービス、飲食業界は、有休消化率が低いことで有名です。接客業全般は、仕事の忙しさがその日にならないと分からないことが多くあります。そのため前もって休みの申請を出しても、仕事が忙しくなると直前に却下されることがあるのです。
また休みが取れても、アルバイトが急に休み、ヘルプを頼まれてしまうこともあります。後回しにできない接客業という特性と、アルバイトありきで仕事を回す風潮がネックになっているようです。
卸売業
卸売業も休みがとりづらい業種です。原因は人手不足です。卸売業の業務には、ピッキングや配送、接客、営業など、人間でなければできないものが多くあります。そのため毎日ある程度の人数が現場にいなければならないのです。特に地方では、過疎化の影響で十分な人材を得ることが出来ない業者が多く、どうしても1人1人の負担が増えてしまいます。
また、大手企業のように、最先端の技術を導入することも難しく、単純な作業でも人の手に頼らざるを得ないというのが現状です。
学校教員
休めないキツイ仕事のイメージが強いのが、学校教員です。昨今のモンスターペアレンツ問題や教員の過労死、精神的負担、学校教員の待遇の悪さがメディアで取り扱われたことにより、教員になりたい若者がどんどん減っており、学校での人手不足が問題になっています。
実際、教員試験の倍率は2000年度の13倍から、2020年度には3.9倍まで下がっています。そのため有休どころか、通常の休みも取れないのが現状です。
農業
農業も、有休制度が整っていない職場が多く、有休消化率が伸び悩んでいる業種です。農業は自然を相手にする仕事なので、スケジュールをあらかじめ立てることが困難であることが原因です。その他にも、生産物によって収穫時期や出荷時期も異なり、1年を通して作業内容や作業量が大きく変わるため、従業員の休みに関しては一般の企業とは違った制度を備えなければいけないのです。
また後継者不足の問題もあります。農業従事者は減少傾向で、1人1人が世話をする農地の面積は増え続けており、休みたくても休めない農家が多くいるのです。
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